音も時間も止まるバリの新年

バリには二つの暦があり、その一つが太陰暦(月の暦)です。
毎年、10番目の暗月の次の日がサカ暦の新年になります。
今年は3月28日が新月でニュピになりました。
前日の暗月の日には悪霊を追い払う儀式があり、悪霊を模したハリボテのお神輿が町を練り歩き、そのお神輿につられてでてきた悪霊ごと燃やしてしまいます。
夜中まで賑やかに村々で儀式が行われ、一夜過ぎたニュピの日は、きれいに清められたこの世界で瞑想をして静かに新年を迎えるのが慣わしです。
その日一日は外出禁止、機械音禁止、火を使うことも禁止、電気をつけるのも禁止。
そう、とにかく何もしないで静かにしている事・・・と言う事です。
もちろん外出禁止なので車の音もバイクの音もなく、聞こえるのは自然の音色のみ。
鶏や鳥の鳴き声、風でまわる竹の風車の カタコトカタコト・・・と言うのどかな音。
それくらいです。
風の音さえも聞こえてくるような静寂な一日のすがすがしい事。
前日に清められた島は清らかな光に包まれ、空気が透明に澄んでいます。
毎年、このニュピの日が楽しみで待ち遠しいものです。
田を一面に黄金色に輝かせて日が沈む頃、蒼と朱の静かな夕暮れが訪れ、そして漆黒の闇が広がります。
人工灯がないこの世に存在する物は空の星のみ。
新月と言えどもまだ月の明かりもない空には、ただただ落ちてきそうに大きな星が瞬いているのみ。
そして田の一面に瞬く蛍の光。
この広い田を埋め尽くす蛍の光。
まるで光の海のよう。
今年も暗闇がもたらすこんなに美しい恩恵にあずかり、幸せな夜でした。
星も蛍もいつもと変らずそこにあるのに、明かりが増えた今の生活では、ここまでの星も蛍の光も見えない。
このすばらしい時間をバリにいるすべての人と共有しているのだと思うと、胸キュンです。
バリ島のすばらしいことは、どんなに他国の外国人影響を受けても、独自の宗教観を失わないこと。
このニュピの一日は飛行機も飛びません。
天晴れです!
世界中でニュピがあればいいのにね。
一度体験したら、きっと毎年ニュピが待ち遠いしくなりますよ。


この田んぼ一面を蛍が埋め尽くすんです。圧巻! よく晴れた一日の終わりは夕暮れもきれい。さぁ、今から星のショーが始まるのです。
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